「雪景色に咲く花火」福島県・大内宿の雪まつりに行ってきた

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「雪景色に咲く花火」福島県・大内宿の雪まつりに行ってきた

花火は夏だけのものじゃない。

 

2月になり寒さはますます酷くなっている。東京へと向かう電車を待ちながら、マフラーに顔をうずめて寒さに耐える。

風がヒュッと吹くたびに体をこわばらせ、こめかみの辺りがズキンと締め付けられる。冬は毎日が憂鬱だ。冬なんて、早く終わってしまえばいいのに。

寒い…
つらい…
帰りたい…(まだ朝だけど)

そんな憂鬱な日々を過ごしていた。

 

だけど今日は少し違っている。いつもと同じ駅だけれど、いつもと反対側のホームに立っている。東京とは反対の、東北へと向かう電車を待っていた。

東京よりもずっと寒い町に行く予定なのに、気持ちはずいぶんと暖かった。

 

これは福島県のとある町で行われた「雪景色に咲く花火の祭り」のお話です。

関東から雪の世界へ

ホームへと滑り込んできた特急スペーシアの席に座るなり、缶チューハイを取り出した。親指を引っ掛けてフタを開けると、プシュッと弾ける音が胸に響く。

聞き慣れた音だけど、特急列車で聞く音だけは特別だ。平日に溜め込んだ疲れが、パッと弾けて消えていく。

彼女と2人、他愛もないことを話しながらダラダラとお酒を飲む。

トンネルをくぐるたびに景色が変わっていき、会津田島駅に着く頃には一面が美しい銀世界に変わっていた。

そこからさらに会津鉄道へと乗り換えて北を目指すのだけれど……

「電車が、かわいい…!」

日付限定で、列車内の席がコタツになる会津鉄道・お座トロ列車。もう雰囲気が最高。

コタツに入って駅で買った手作り感満載のお弁当を食べながら、ノンビリと車窓を眺めていると……

「いま、サルがいた!!」

と2人で窓の外を指差し大騒ぎ。

どんどんと自然の中へと入っていく。葉が落ちた木々と雪だけが景色を作り、白と黒だけのシックな視界は美しさに満ちていた。

 

そうこうしている間に列車は目的地へと辿り着く。

塔のへつり駅

無人駅なのはもちろんのこと、駅舎すらもない。駅の看板が、いかにこの駅が秘境駅なのかを物語っている。

駅名にもなっている、歩いてすぐの塔のへつりにたどりつくと……

「つらら、大きい!」

と大はしゃぎ。自分の身体よりも大きな氷柱や、自然と作られた渓谷。

車窓から幾度となく見た雪に触ってみると、自分が知っているベチョベチョした雪とは別物で。フワッとしていて、柔らかいというよりは、もう「無い」って感覚に近い。

塔のへつりから列車に乗り、次なる目的地へ。

湯野上温泉駅

「この景色……!!」

湯野上温泉駅は日本唯一の茅葺屋根の駅で、この上なく、これ以上にないほどに絵になる駅。

駅舎の中に囲炉裏があったり…駅舎のとなりには足湯まで…

「最高の駅ですね」
「まさしくその通りです」

なんて贅沢な駅なんだろう。

湯野上温泉駅からは、電話で予約していたタクシーに乗って大内宿へ。

大内宿

今回の旅最大の目的地、大内宿へと辿り着いた。大内宿は昔の時代での宿場町。茅葺屋根の家々が並んでいて、これがまた雪景色と最高に合う。

「お腹空いたね」

大内宿の名物といえば蕎麦らしい。ということで美味しそうなお店・三澤屋に入ってみた。食べ方が面白くて、辛いネギを箸にして蕎麦をいただく。

「う………ネギをかじると、つーんと来る………」
「でもこの爽やかな感じ、蕎麦にとっても合うんだね」

大根おろしも入っていて、これまた鼻が膨らむくらいに辛い。だけどクセになるような幸せな辛さがたまらない。

広場で行われてた「丸太切り大会」に参加したり、展望台から大内宿を一望したり、名物である十年餅をいただいたりしながら、のんびりと大内宿を楽しんだ。

そうこうしている間に夜になり、遂に今回一番楽しみにしていたイベントが始まった。

「あそこ見て!」

指のさす方を見てみると、真っ暗だったあたりが一気に明るくなっていた。その灯りがだんだんと近づいてくる。

「すごい、迫力…」

火を持った裸の男たちが、列をなして走り抜けていく。

通り過ぎた瞬間、寒さで痛みを感じ始めていたホッペタが一気に暖かくなる。じわじわと熱が広がっていくのが気持ちいい。

「みんな、すごいハクリョ

「ドンッ」

大きな音がなった。

見上げてみると雪が降る空に花火が打ち上がっていた。花火が咲くのと同時に、周りにある牡丹雪も灯りを帯びていく。段々と灯りが広がっていく。

「キレイ…」

そうだ。この瞬間を、1番楽しみにしていたんだ。

 

「夏の風物詩を、冬の空で見てみたい」なぜだかそのシチュエーションにずっと惹かれていた。駅のポスターで大内宿のイベントを知ったとき、「あぁ遂に夢が叶うんだ」と思わずにいられなかった。

花火を見上げながら、白い吐息を吐いている。不思議な感覚だ。そんな感動していた矢先……

「あーヨイショ!!」

突然村中に響くスピーカーから、おかしな声が聞こえてきた。

「おーい次まだか!!」

威勢の良いじいちゃんの声がする。どうやらこの祭りの偉いじいちゃんが、花火を盛り上げるために掛け声を掛けているらしい。

「いんやキレイだな!!」

まあ、確かにキレイなんだけど、しっとりとしていた僕らの気持ちをどうしてくれる。ふざけんなよ。感動を返せ。

彼女と顔を見合わせて、このシチュエーションに苦笑い。周りを見れば、みんなが首を傾げながら笑っている。でもまあ、こういうのもなんかいいな。

大川荘

余韻に浸りながらタクシーに乗り、今晩の宿・大川荘に着いた。

宿で夕飯を食べたあと、餅つき大会に参加したり、透き通るような美しい湯に入ったり、美しい渓谷を眺められる露天風呂にも浸かったりして、布団に入った。

この上なく満たされた気持ちだった。

冬は嫌いだ。寒さに身体をこわばらせ、こめかみのあたりが痛くなる。冬は毎日が憂鬱だ。

だけど今日は違った。雪に触り、つららを眺め、茅葺屋根に触れて、花火を眺めた。東京にいるよりも、ずっとずっと寒かった。だけど気持ちは暖かい。

冬は嫌いだ。だけど冬の花火は最高だ。

冬が少しだけ好きになる。そんな福島の旅だった。

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